17世紀末のスペイン継承戦争が起こらず、「日の沈まない帝国」スペインの王朝も領土も保全された世界。
ナポレオンの台頭もスペインによって抑え込まれ、この世界では神聖ローマ帝国も、そしてヴェネツィア共和国もまた、生き存えていた。
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とは言え、すでに最盛期を遠く過ぎ、衰退の道を突き進んでいたこの国は、早急な改革が求められていた。若くして元首に選出されたニコラ・ベルティは、資本家たちの力を借り、性急な改革を断行。
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自身の利益が毀損されるのを恐れた貴族勢力は自由主義者と手を組み選挙制の導入とそれに伴うベルティの失脚を狙うも、秘密警察の役割も担う十人委員会の権限復活などを進めたベルティによって鎮圧されていく。
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改革の恩恵は国民生活の向上という形で反映され、成功しつつあったベルティだったが、そこで覇権国スペインの足元を掬うべく英仏両国が東西の海でこれと対決。
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ドイツでも神聖ローマ帝国(≒オーストリア)と新興国プロイセンとの間で激しい戦いが繰り広げられ、そこにロシアも介入するなど、欧州の外交状況は激しさを増していた。
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そして、この事態を乗り越えるべく、ベルティと対立する貴族、教会勢力はフランスへの接近を企図。
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最終的に彼らはフランスが率いる関税同盟(貿易同盟)に加入する道を選ぼうとする。
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他国への隷属を嫌うベルティはこれを拒否しようとするも、彼の支持基盤であった実業家集団もこれに賛成したことでベルティはやがて四面楚歌に追い込まれていき、最終的には選挙制の導入を求める急進主義者が資本家勢力の中心に台頭したことにより、選挙制の導入が決定。ベルティは退陣を余儀なくされた。
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1851年8月12日。最初の選挙の結果、貴族と聖職者らを中心とした右派勢力が勝利。
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新たな元首ピエトロ・ファルクィ・ペスの下、ヴェネツィアはフランスの勢力圏に入り、新たな時代を迎えることとなる。
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この変化はヴェネツィアに何をもたらすのか。
誰も見たことのない19世紀後半が始まる。
目次
Ver.1.7.6(Kahwah)
使用DLC
- Voice of the People
- Dawn of Wonder
- Colossus of the South
- Sphere of Influence
使用MOD
- JapaneseLanguageAdvancedMod
- PAX HISPANICA
- Cities: Skylines
- ECCHI Redux
- Expanded Building Grid
- Extra Topbar Info
- GDP Ownership Display
- Historical Figures
- Romantic Music
- Sphere Emblems Plus
- Universal Names
- Western Clothes: Redux
前回はこちらから
ピエトロ・ペスの野心
前元首ニコラ・ベルティは、早急かつ確実な改革のため、専制的かつ独善的な政治スタイルで結果を出してきた。
それが故に最後は仲間たちに裏切られる結果となったことへの反省も踏まえ、新元首ペスは自身に協力した各勢力への配慮を政策に取り込んでいった。
まずは資本家勢力の要望していたフランス関税同盟への加入を実現。
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これまで成長のボトルネックとなっていた資源を大量獲得。さらに増した需要に合わせて各施設も繁栄していくこととなる。
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さらに、選挙制の導入を巡り協力関係にあった自由主義者たちにも配慮し、ベルティが復活させた十人委員会の権限を再び制限。
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政権内を「味方」ばかりにすることに成功したペスは、いよいよ彼自身の「野心」に手をつけ始める。
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「ーーベルティ時代の問題、経済成長の阻害要因は、資源の不足と人口の少なさでした」
新元首ピエトロ・ファルクィ・ペスはテーブルを囲む閣僚たちに向けて語りかける。
「その解決のために先の通りフランスの関税同盟入りを果たしたわけですが、それで根本的な解決が図られたわけではない。
今後、何が起こるか分からない。そのためにも、我々はその二つーー資源と人口ーーを、自分たちで賄えるようにしなければならないのです」
「それがすなわち、元首殿が求める軍備の増強、の理由、というわけですね」
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席の端に座る、自由主義勢力の中心人物、ファブリツィオ・コビアンキが眉間に皺を寄せながら口を開く。選挙制の導入という目的のためにペスら右派勢力と手を組みはしたものの、土地所有者にしか選挙権を認めないこの不平等な制度には満足はしておらず、こうして閣議の場に呼ばれた今も敵対的な意志を隠すことなく座っている。
「ヴェネツィアが再び帝国となることを望んでいるというわけですか」
「その通りです」ペスは怯むことなく告げる。「そうしなければ、我々は歴史の闇の中に消えていくでしょう。
50年前、私たちはスペインの庇護の下、フランスの隷属下に置かれる道を避けることができました。今、そのスペインが弱体化する中で、やむにやまれずフランスと手を結ぶ形でその傘下に入ったわけですが、そこで安住していては、いつかフランスの一地方にまで落とされていくことになるでしょう。
自立できるだけの力を、今のうちに蓄えていくことが重要です。そのためにはまず、軍備を整え、より弱体な国々を我々が呑み込み、その力を得ることが重要です。
それが帝国というものであれば、我々はそれを目指すべきでしょう。そもそも、かつての我々はまさにそのようにして、力をつけてきていたのですから」
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元大司教とは思えぬ「好戦主義的」な言い回しに、コビアンキは不快さをさらに色濃く表情に映し出す。
しかし、その対面に座っていた初老の男は、特に気にした様子もなくペスに訊ねた。
「で、その標的としては、どこを考えているんだ?」
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男の名はエフィジオ・ソラローリ・ディ・ブリオーナ。ペスら教会勢力と並び、選挙で勝利した右派勢力の中心人物の一人で、貴族勢力の指導的地位に立っている男だ。
ペスは彼の方へ視線を向け、答える。
「まずはニジェール地域のムスリム国家、ソコト。この地には豊富な鉄、鉛、石炭資源が眠っており、特に鉄と鉛はヴェネツィアの独立時代には常に枯渇していた資源だけに、これを支配下に置くことは非常に有用です」
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「次いで、オスマン帝国領のアドリア海沿岸地域、すなわちモンテネグロやアルバニア、テッサリアといった地域。ここは人口も多く、資源と合わせてヴェネツィアに足りない国力を増強させてくれるポテンシャルを持っております」
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「なるほど。しかしアフリカの小国ならまだしも、オスマン帝国は我々単独で戦える相手なのか? 100年前はスペインと協力してこれを倒し、ギリシャの地を獲得することができたものの、今回もそれが得られるとは限らないが」
ブリオーナ卿は訝し気な様子で尋ねる。
「仰る通りです。しかしオスマン帝国はかねてのエジプトとの争いに敗北し、その国力を一気に落としております。もはやアフリカの小国とさほど違いのない相手と言えるでしょう」
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「それでも、今のヴェネツィアの軍事力ではそのどちらも相手するには心許ありません。よって、暫くの間、我々はこの軍事力の増強に注力していく必要があるでしょう。
大臣、説明を」
「は」
ペスに指名された陸軍大臣オッターヴィオ・ロッシは閣僚たちの前に進み出て解説を始める。
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「現時点では2万名足らずの我らがヴェネツィア陸軍について、まずは3万超まで拡大を図ります。我々は最新式のライフル銃を装備した散開歩兵戦術を熟知しており、未だにマスケット銃で戦列歩兵を並べるだけの旧式のオスマン軍に対してはそれだけでも十分に互角に戦うことができます」
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「しかし互角なだけでは我々側の犠牲も大きくなってしまう。そこからさらに軍事力を跳ね上げさせるべく、最新式の大砲技術を現在研究中となります。暫し時間を要することにはなりますが、この開発を完了させた暁には、一気に戦力的なアドバンテージを獲得することができるでしょう」
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「ヴェネツィア陸軍は生まれ変わります。そしてここから、我々の覇権の復活は始まるのです」
陸軍大臣の言葉を引き継ぎ、ぺスは高らかに宣言する。ブリオーナ卿は満足気に頷き、コビアンキは渋い顔をさらに歪めるも、その場の全体的には、ぺスの意見に同意する雰囲気に包まれていた。
いずれにせよ、ヴェネツィアは蘇る必要があった。ベルティはそれを経済面で成し遂げようとし、ぺスは軍事面でそれを成し遂げようとしていた。
方法は全く異なるものの、目指すべきところは同じであった。
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1858年。
ぺス率いる右派勢力が政権を握ってから7年。
ヴェネツィア共和国は南カメルーン植民地*1に隣接するソコト帝国へと侵攻を開始。同国の保護国化を要求した*2。
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この時点ではまだ後装砲は研究完了しておらず、労働人口の少なさから兵の数も揃えられないヴェネツィアは、何とか「追加物資」と「散開歩兵」の力に頼りながら力押しをしていく。
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1859年8月19日。苦戦しながらもようやくソコトを降伏させ、19世紀のヴェネツィアにおける最初の保護国となった。
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1863年3月14日についに「後装砲」をアンロック。すぐさま各部隊に最新鋭の砲兵「榴散弾砲」を配備していく。
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時を同じくして、英国が西アフリカの小国ベニンを征服しようと軍隊を動かしたことに対しフランスが反応。英仏間の緊張が一気に高まっていく。
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この隙に、ヴェネツィア政府はオスマン帝国に対しアルバニアの割譲を要求。
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イギリスは元々オスマン帝国に対して「守護」態度を持っていたものの、このフランスとの緊張状態が決め手となり、介入の危険性は限りなく0に近いものとなっていた。
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かくして、1863年7月16日。
狙い通り大国の介入のないまま、ヴェネツィア共和国はかつての仇敵、今や弱体化した「獲物」たるオスマン帝国への宣戦を布告。
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緒戦は血気盛んに襲い掛かってくる敵を防衛体制で削りつつ、敵の攻勢が弱まったのを見計らって攻勢に転じ押し込んでいくといういつものパターンで勝利を重ねていく。
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もはやオスマン帝国、恐るるに足らず。
このまま圧勝し、ヴェネツィアは栄光ある帝国への第一歩を踏み出すことになるだろう――そう、思われていた。
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だが――
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「戦況は?」
「は。すでに我が軍はアルバニア、南セルビアまでを制圧しており、戦略目標は達成。あとは現地部隊に防衛に集中させることで、敵の降伏は時間の問題となるでしょう」
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「ただ、一つ、別の問題がーー」
と、陸軍大臣は言いにくそうにペスの表情を窺う。
「構わん。現状の海上交易路のことだろう?」
「ええーー英国と、我らが市場宗主国のフランスとの間の戦争は激化しており、特に地中海における海戦ではフランス海軍は軒並み英海軍に敗北」
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「その結果、同地におけるフランスの海運が機能停止しており、これはそのまま我らがヴェネツィアの海上輸送路の機能停止を招いてもおります」
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「我らがヴェネツィアはあらゆる州が海上交易路で繋がっており、これが機能停止することはすなわち、全都市の孤立化を意味し、必要な資源の供給が止まった各州の産業は崩壊」
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「結論から言えば我が国の経済は、真っ直ぐに崩壊へと向かっております」
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「・・・いつかは、この時が来るとは思っていた。だからこそ、資源や人口を自給できる体制にするべく、この10年を費やしてきたのだが・・・間に合わなかったか」
ペスは悔しそうに唇を噛む。
「とにかく、目の前の勝利を急げ! もたもたしていると、銃弾も交換する武器も枯渇する。その前に何としてでもオスマンを降伏させるのだ!」
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ペスの言葉に従い、ヴェネツィア陸軍はさらなる攻勢を仕掛けオスマン帝国を脅かし、ついには1864年10月28日、オスマン帝国は降伏を受け入れる。
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オスマン帝国との間に結ばれたトリポリ条約の結果、ヴェネツィアはモンテネグロとアルバニアの地を新たに獲得。1571年にオスマン帝国から奪われたアルバニア・ヴェネタの奪還をついに果たしたのである。
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しかし、それで現状が回復するわけではない。英仏は未だに戦争が続いており、激減するGDPはついに最盛期の半分以下にまで落ち込み、信用枠上限の減少という形で国家にも直接的な悪影響が及ぼされつつある。
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財政破綻を免れるべく、政権は建設局の稼働を止め、税率を最大にする。
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だが、ただでさえ産業の崩壊により路頭に迷う者が続出していた中で、税負担まで急激に増したことで国民の生活水準もまた、激減。
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当然の如く国民の不満は急速に高まり、政権を支えていた資本家たちもまた、公然とこれを批判するようになっていった。
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そしてそれはやがて、19世紀のイタリアで燻り続けていた民族主義と結びつき、ヴェネツィアの千年の伝統そのものに対する叛逆という形で盛り上がりを見せつつあった。
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「ーー提督、決断を為すべき時です!」
兵士たちは口々に叫ぶ。その騒ぎの中心にいる人物、先のヴェネツィア・トルコ戦争の英雄の一人たるシルヴィオ・カベラ提督に向けて。
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「貴族たちも聖職者たちも、理解していないのです! この共和国のここまでの発展、千年の繁栄が、提督のような海の男たちによるものだということを! 奴らは今や、陸に上がった唯の傲慢な帝国主義者たちなのです!」
兵士の一人が高らかに叫ぶと、そうだそうだとこれに同調する若者たち。今、共和国第二の都市ヴェローナに集まったこの血気盛んな集団は、爆発寸前の火薬庫そのものであった。
それはもう、止めることのできない運命の奔流であった。彼らは彼らを苦しめるものを打ち倒し、彼らの理想を実現するまで決して衰えることはないだろう。
騒ぎの中心にいたその男はそのことを理解し、自ら先頭に立ってヴェネツィアへの行進を決断した。
1865年8月1日。
この日巻き起こった「ヴェローナ革命」は、この10年の間に急成長し共和国の拡大を支えた陸軍・海軍のほぼ全勢力を結集しヴェネツィアに迫り、ドゥカーレ宮殿にいたピエトロ・ファルクィ・ペス元首とその政権を退陣に追い込んだ。
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彼らはその「革命」と共にいくつかの改革を要求した。
まずはこれまでの土地所有者のみに認められた非常に限定的な選挙制度を改め、広く一般市民に至るまで投票権を認める制限選挙の制定。
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これによって今までは世襲貴族で占められていた大評議会議員にも一般市民が多く選出されるようになり、選挙で勝利した多数派の政党党首は「首相」として行政の最高責任者を務めることとなる。
即ち、この新しい共和国にはもはや元首はいない。議会と独立した国家の最高権力者ではなく、国民の信任によって成り立つ議会が行政の監督を行う議会共和制へと変貌を遂げたのである。
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さらに、同じく世襲貴族によって支配されていた各種官僚組織も首相の任命によって定められることとなり、国家のあらゆるシステムが真に民主主義的な形へと改変された。
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この類を見ない規模の大変革たる「ヴェローナ革命」は諸外国に衝撃を与え、その自由と民主主義の体現者としてカベラ提督と共に革命の思想的先導者となった知識人エンリコ・セラも大いに注目を集めることとなった。
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そして、このセラとカベラ提督が中心となって率いる「自由貿易党」が、革命直後の選挙で圧勝。
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党首を務めていた共和国の英雄、革命の英雄たるシルヴィオ・カベラが「初代首相」として選出されることとなったのである。
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だが、カベラにとってはここからが重要な局面であった。
国民の怒りに応える形で祭り上げられ、共和国の千年の伝統を破壊するかの如き革命と共にその政治的頂点に立った彼だが、共和国の苦境は決して改善はしていない。
むしろいよいよ財政は限界に達し、債務不履行に到達。これをなんとかすべく引き続き税率は最大のまま保たざるを得ない状況だ。
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それでも、破壊と変革の達成感が国民の感情を一時的に緩和させてくれたため、ぺス静観末期よりは体制を支持する国民の数は多くなってくれてはいる。
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しかしこれもカベラが「何もしない」ことを続けていれば、やがて失望と共に急転することになるだろう。
カベラは早急に結果を出す必要があった。
即ち、全ての元凶たるーーフランスからの、その経済的支配圏からの、独立である。
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「独立」戦争
1867年7月23日。
マドリード王宮を訪れたカベラは、その豪奢さに暫し言葉を失った。磨き上げられた大理石の床は鏡のように輝き、天井には壮麗なフレスコ画が広がっていた。金箔が施された柱は天に向かって聳え立ち、豪華なシャンデリアが無数の光を放っていた。
黄金と赤色で装飾されたペルシャ製の絨毯を踏みしめ、カベラはゆっくりと玉座へと近づいていった。部屋中に漂う香木の香りが、何とか彼の心を落ち着かせていた。近づくカベラを目にした部屋の主がゆっくりと立ち上がると、口元に小さな笑みを浮かべながら来客を迎え入れた。
「我が王宮にようこそ、我が友よ」
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彫りの深い端正な顔立ちの男は豊かな髭を蓄えた野性味を感じさせながらも、その視線には彼が傾倒するサラマンカ学派*3の影響による知性の輝きが放たれていた。
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この男こそ、この世界の「覇者」たるスペイン王、フェリペ・アブスブルゴ=カルドナである。
「陛下、こうして対面できること、感激の極みで御座います」
恭しく頭を下げるカベラを手で制しつつ、フェリペは苦笑する。
「そう畏るな。私などたまたまこの地位に就いているだけの身。千年の伝統にメスを入れ革命を成し遂げた重圧をその双肩に担う貴殿こそ余程の傑物と言えるだろうよ」
「そのようなことをーー重圧と言えば、陛下ほどその身に背負われている者もおりますまい。我々は確かに時の重みはありますが、陛下は何せ、世界の王と言うべき存在なのですから」
カベラの言葉に、王は表情を強張らせる。
「確かにな。そしてその地位もまた、今揺るがされつつある。我が誇り高き祖先らの築き上げた栄光と繁栄を、我が代で潰えさせるわけにはいかぬ」
言いながら王は壁の一角に向けて歩いて行く。そこには巨大な世界地図が広げられており、彼はその中央に視線を注いだ。
「我らが帝国を脅かす敵共が存在する。大英帝国は言うまでもなく、もう1つーーフランス。憎きナポレオンは60年前に滅ぼすも、その亡霊の如きブルジョワたちに指示された偽りのフランス王が事あるごとに我らの覇権に挑戦状を叩きつけてくる。
20年前は奴らの策略で新世界の植民地たちの蜂起に見舞われた。そして今、我々がアフリカ植民地における勢力拡大への意図に、愚かにも口を挟まんとしているのだ」
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カベラは無言で、地図に対面するフェリペ王の背中を見つめていた。
王は振り返り、カベラに語りかける。
「我が友、貴公らは形上はフランスの勢力圏に属している。しかし、その心中には決して忠実なる臣下とは言えぬものが秘められていると、聞き及んでいる」
「・・・仰る通りです、陛下」
カベラは素直に認める。
「旧政権はフランスとの関係を重視し、その貿易同盟による利益を得ようとしていましたが、有事には彼らは苦境に陥る我らを決して助けようとはしてくれませんでした。
我々は彼らに、市場の独立を求めることさえしましたが、これに対しても無情な返答が返ってくるだけでした」
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「その上でまた貴国と激しい戦いを繰り広げようとしている――我々の経済は再び限界を迎えることとなるでしょう。
我々はすでに決意しております。この15年の隷属からの『独立』を。そしてそれを勝ち取れるのであれば、我々は、陛下、貴国への協力を惜しむつもりは御座いません」
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「良かろう――我が友よ。共に闘おう。我々は今や、旧き帝国なのかもしれぬ。しかしその伝統と誇りは誰にも負けぬ。共に手を取り合い、新時代へと立ち向かっていこうではないか」
差し出されたスペイン王の手を、カベラはしっかりと握り締める。
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かくして、1867年11月14日。
アフリカの小国ベニンを巡る争いは、世界の覇者スペインとこれを追うフランスとの間の戦争として、そしてヴェネツィアの運命を左右する戦争として、幕を開ける。
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戦線は3つ。まずはフランスの東西を挟み撃ちにするようにして形成された「東部戦線」と「ピレネー戦線」。
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そして戦争の主目標たるベニンに形成された「アフリカ方面戦線」の3つである。
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スペイン軍が数的優位に立つピレネー戦線では、スペインの名将たちが次々とフランス軍を打ち破り占領地を拡大。
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一方で10万超のフランス兵が投入され、数的劣勢に立たされている東部戦線にはヴェネツィア陸軍も動員され、低地諸国地方ではヴェネツィア陸軍の歴戦の名将マウリツィオ・ボン・コンパーニ大将が奮戦。フランス軍を押し返すことに成功している。
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そしてアフリカ戦線ではフランス軍の遠征隊も参戦するもその支援は十分ではなく、瞬く間にベニン全土およびコンゴ方面のフランス植民地を占拠。
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翌1868年3月13日に早くもベニン王国は降伏を宣言し、戦線を離脱した。
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あとはフランスのみ。東部戦線ではスペイン・ヴェネツィア連合軍が合計15万の兵を動員し鉄壁の守りを固めている間に、ピレネー戦線では一気にスペイン軍がフランス内部へと侵攻。占領地を広げていく。
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最終的に6月7日。
スペインはマドリードで開かれた講和会議の場で、自勢力の要求をすべて突き付ける講和条約を作成。
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当然ヴェネツィアもこれを受け入れ、翌6月8日。フランスとスペイン・ヴェネツィア連合軍の戦争はわずか半年で終幕を迎えることとなった。
そして、これにてヴェネツィアは晴れて「独立」を勝ち取った。
僅か15年の間の「隷従」期間。しかしそれは決して回り道ではなかった。確かに経済的な限界を迎えていたヴェネツィアは、その間にぺス元首のもとで領土を拡大し、経済を伸長させた。結果として彼らは確かに「大国」と称されるほどの存在にまでその権威を復活させられていたのである。
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「――ベルティ元首、ぺス元首、いずれも、決して『失敗した』指導者ではなかった。彼らはこの19世紀において死体同然の有様でかろうじて存続していた共和国を、そのときそのときに必要な改革を通して確かに『復活』させてきたのだ」
カベラは戦勝に湧く首都の盛り上がりを遠巻きに聞きながら、宮殿の一室で冷静な表情で呟く。
「私もまた、必要な改革を成し遂げねばならない。この『独立』はそのための第一歩に過ぎない。この先もまた、数多くの血を流し、理想を語るその口で欺瞞も吐き続けることになるだろう。それでも私は成し遂げる――この共和国を、真に偉大な国家として成長させ、そしてその名に恥じぬ帝国として復活させることを。
それが先の改革者たちに対する礼儀であり、我が身に課せられた責務なのだから。
故に、我はここに宣言する。共和国の、新たな時代の幕開けに相応しい、我々を中心とする真なる繁栄と共栄の勢力圏――晴朗きわまる所の設立を」
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かくして、数多くの困難を乗り越えつつも、ヴェネツィアは新たな時代を迎えようとしていた。
果たして彼らは、真に繁栄と帝国の復活を成し遂げられるのか。
第3回へと続く。
【参考】1851→1868の収支・人口比率推移
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【参考】1868年時点の貿易状況
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【参考】1868年時点の法制度状況
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アンケートを作りました! 今後の方向性を決める上でも、お気に入りのシリーズへの投票や感想などぜひお願いします!
これまでのプレイレポートはこちらから
モンジョワ・サンドニ!:フランス・レジティミスト政権(ブルボン復古王政)プレイ
アフガンの黒い風:新DLC「Sphere of Infulence」を導入し、カブールスタートでアフガニスタンを形成しつつ英露による「グレート・ゲーム」の中で生き残りを目指していく。
世界で最も豊かで幸福なスイスの作り方:わずか2州の内陸国「スイス」で、1人あたりGDPと生活水準平均での世界1位を目指す内政プレイ
神聖ローマ帝国の復活:Ver.1.5で形成可能となった「神聖ローマ帝国」形成を目指すオーストリアプレイ
フランシア博士の夢:新DLC「Colossus of the South」で遊ぶパラグアイ編
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虹の旗の下で 喜望峰百年物語:ケープ植民地編。完全「物語」形式
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1.2オープンベータ「ロシア」テストプレイ:大地主経済と異なり、純粋に改革と、最終的にはソ連成立を目指す
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大インドネシア帝国の夢:スマトラ島北端に位置する小国アチェが、インドネシア成立と世界1位を目指す
大地主経済:ロシア「農奴制」「土地ベース課税」縛り
金の国 教皇領非戦経済:「人頭課税」「戦争による拡張なし」縛り
*1:なお、当初はニジェール・デルタに植民地を築いていたが、すぐさま同地域にスペインも植民を開始し、その殆どを(より人口が多く植民スピードの速い)スペインに奪われてしまっていたところ、スペインの方からこのニジェール・デルタの植民地とスペインの持つ南カメルーン植民地とを交換する提案を持ちかけられた。すでにニジェール・デルタ植民地の開発は進んでいたものの、中途半端にしか拡大できていなかったヴェネツィア領ニジェール・デルタよりも、スペインから提示された南カメルーン植民地の方が人口は多く将来性があったため、交換に応じている。
*2:国外投資が解禁されて以降、領地を無駄に奪うよりも保護国化など従属下に置いた方が有用であることが増えた。
*3:PAX HISPANICAにおけるスペインの固有利益集団(知識人代替)。一般的な国の知識人と違い「反教権主義」と「共和主義」を持たず、識者や教育者の助言を受けた君主が国を治めることを望む「紳士」イデオロギーや「実力主義」「平等主義」といった、先進的な改革を望むイデオロギーを多く有している。